偉大なる先輩たち
今日は小川康さんの「僕は日本でたったひとりのチベット医になった」って本を読んだ。日本人、いや外国人で初めてチベット医になった方の自伝。チベット語を学びチベット人と同じ条件で医大に通い、卒業された方。
いやー。すごいなーー。泣きました。
わたしの葛藤や苦労なんて小川さんが経験したことに比べたら、ちっぽけすぎるものなで共感できるところがあるなんていうのは恥ずかしいんだけど。でも、日本人一人でインドの伝統医大に通う身として痛いほど分かる部分もあった。
卒業試験で八万字の詩を4時間に渡り暗唱されたそうで。本当にすごすぎます。
アーユルヴェーダも詩の形で古典書に書き残されたので、沢山の詩(サンスクリット語)を暗唱しなきゃいけないんだけど100個くらいの詩を覚えるのにも何度も何度も繰り返して、とてつもなく大変なのに。4時間にも渡る暗唱なんて本当にどれだけ大変だったんだろう。頭が上がらない、、
そしてこのくらいの暗記量でひーひー言っているわたしださすぎる。
でも、身体にしみ込むくらい暗唱したらきっと見えてくる世界が違うし、
また違う境地にいけるんだろうとも思う。
以前ある巫女さんが言っていたことば。
祝詞は、まず初めは「読む」
次は「覚える」
更に「染み込ませる」
そして、最後は「忘れる」が肝心。
本当にその通りなんだろう。
自分の血肉になった時、はじめて使える知識となるんだろうな。
そしてわたしまだまだすぎる。。
まだ「覚える」レベルまでにしか達してない。
3大古典書のひとつに ashtanga hirdra という書があるんだけど、
今の時代に治療するのにはこれを完璧にすれば十分だという人もいる。
卒業までにわたしもこの最初の巻、30章(の中のもっとも大事な章半分くらい…弱気w)の暗唱に挑戦しようかなと思います。
そしてヒンディー語も聞いて半分わかるくらいで、
話すのは片言にも程があるし英語まざってルー大柴みたいになってるしこちらもしっかりしなければ。小川さんはチベット語で学んでいたんだよなあ。本当にすごい。clinical classが始まったら、言語の問題で失うものが多すぎるので。進級試験が終わったら本腰入れようヒンディー語。
そして小川さん日本では「森のくすり塾」という子どもたちを集めて薬草ワークショップなどを開催しているそう。素敵すぎます。
最近、2学年目で薬草を学んでいるのですが、日本と全く違う薬草すぎて(そもそも薬事法で薬処方できないし)日本でこの知識をどうやって役立てたらいいんだろうとか、日本の薬草について勉強したいと最近考えていたので。いつかぜひお会いできたらいいなーなんて
tedにもでていらっしゃったようで。
http:// https://vimeo.com/154971688
もう一人の偉大な先輩は
同じインドでシッダ医学という南インドの伝統医学を学び、首席で卒業された先輩。
この方も初の外国人としてとてつもない苦労をされて、シッダ医師になられた。
いつもいつもたくさんのアドバイスをいただき、支えられています。この先輩がいなかったらわたしはこの大学に入ることも1年半ここで生きのびることもできなかっただろうという本当に恩人です。
先日こんなところに日本人にも出演されてました。
世界の村で発見!こんなところに日本人 インド 2015年11月20日 151120 - YouTube
なにが言いたかったかというと、
わたしが日々苦労と思っていることなんて諸先輩方と比べたら苦労なんて呼べるものではなく、こんなことでくよくよしてるわたしはださすぎるってことで。もっと頑張らなくてはなーってこと。
色々と大変なことはあるけれど、 自分の好きなことを人生で初めてしっかり学べて(しかもインド政府から奨学金までいただいて)仕事にして生きていくってとてつもなく幸せでありがたいことだよなー。
わたしの今の仕事は学生。学んで生きる。
色々と雑音はあるけど、惑わされずに。自分の限界までやりきろう。
とりあえず迫りくる進級試験ピンチすぎるので、当面の目標は進級で。
ではまたー。
写真は今日の製薬実習。
100人無事に吐き終わりました
あーー、今日はなんだか身体に力が入らない。。なんでだろう。
早く寝て明日早起きして勉強しよう。。
さて、前回の記事で書いたvamana。無事に終わりました。
どうせインドならではのトラブルが沢山起こるんだろうなーと思っていたのですが、
予想外にちゃんとしてました(失礼
一人一人の患者さんにまず学生(最終学年のみ)を付けて、4人くらいの学生にひとりのインターン生、その上にドクターがつくというシステム。ちゃんと機能しているように見えました。ドクターはひとりひとりの患者さんをきめ細かく見ることはできなかったはずですが、学生も経験を詰めたしよかったのではないかと思います。
わたしはなぜか公式写真係に指名されたのでドクターからの細かい注文をたくさんいただき、写真をひたすら撮りまくってました。こないだも書いたように記録を作るために100人vamanaをするなんて。。とコンセプトに賛同できなかったのですが。終わってみて学生の身からすれば、1日に100ケース見ることができたので貴重な経験になりました。
せっかく写真を撮ったので少しシェアしようと思いますー。
吐いてる写真もあるので、食事前には見ない方がいいかも、、
まず6時からvamana前のマントラ開始。
50人×2回で行われました。
使われた大量のミルクたち。
大量の薬草汁。
はじめにミルクを飲みまくります。
3リットルくらい飲みまくります。
もちろん吐きます。
吐き気を催す薬を食べてもらいます。
待ちます。
吐きます。吐きます。
薬草汁(とてもまずい)を大量に飲みます。
飲みます。
吐きます。吐きます。
その後、食塩水を飲みます。
吐きます。
よいサインがでたら、終わりです。煙を吸って吐いてもらいます。
というのが主な流れです。
50人が一斉に吐きまくるというのはなかなかすごい光景でした。。
vamanaの後は1週間ほど、決められた軽い食事をしなければなりません。
守らないとせっかくの努力が水の泡になるどころか、逆効果です。
教授とインターン生とボランティアの学生たち。ではまた〜
太るのは簡単?
こちらデリーでは冬が終わり春が始まりました。冬が終わった喜びもつかの間。
アーユルヴェーダでは春は消化力が落ちる時期と言われています。で、わたしも例に漏れず見事に消化不良に!食べた物が全く消化できず、3日間吐いたり下痢したりで。。胃を休めるためプチ断食したら、体重がまた落ちてしまいましたー。困った。
「また」というのは、(元々ふくよかなタイプではないのですが)20歳過ぎまでは体重が減ることもなく健康的な体形でした。その後、21歳くらいの時に、スポーツをしている最中に右膝の前十字靭帯(膝の動きを支える要とも言える大事な靭帯)を負傷。
その後、靭帯の再建手術をしてからというもの体重が少しずつ減っていき、全部で10キロくらい減ってしまいました。それからというもの太ろうとしても太れないのです、、
「痩せたい」と言っている女子の意味がわからない系女子です。
インドに来てからも、尋常ではないストレスにさらされ体重はまた減り。今回の胃の動きの停止で、また減ってしまいました。。
これ以上減ったら本当にまずいレベルのところにいるので、増やさなければ!!
ってことで、体重増加治療をしようと思います。目指せ10キロ増。
アーユルヴェーダの古典書にも「太っている人の体重を減らすのは難しいけれど、痩せている人の体重を増やすのは簡単だ」と書かれています。ということはわたしの体重を増やすのも簡単なはず。よね?
ドクターに指示してもらい、治療していきます。1ヶ月後から少しずつ見た目が変わってくるはずなので、乞うご期待。また結果報告します。
さて、アーユルヴェーダでは沢山ある治療法の中で、パンチャカルマと言われる5つの身体浄化法があります。
その中の一つvamana(めちゃくちゃ簡単に言ってしまうと大量のミルクをがぶ飲みし、その後にとてもまずい薬草汁を大量に飲み、身体に溜まった毒素を吐きまくるという治療法。ほんとはもっと細かく長いプロセスがあります)をするには、この季節が最適です。
で、わたしの通う大学の病院は何を思ったか、1日で100人にvamana治療をする記録を作る!とか言い出し。明日、100人が一斉に吐きまくることになりました。
ちなみに、うちの病院はデリーで一番土地が広く、患者数が多いそうです。(そもそもデリーにアーユルヴェーダ大学病院2つしかないんだけど。。)
一番土地の広い病院とか、1日で100人vamanaの記録を作るとかわたしにとっては本当にどうでもいいです。それより質の方がよっぽど大事でしょう。
(インドで「1番」というはとても大事なようです。クラスでは先生が毎回テストで一番になれと貴重な授業時間を使い、お説教。テスト結果が来た後は、トップ3の生徒と他の生徒の扱われ方は全く変わります。)
この治療法はちゃんとした管理の元で行われないと、危険も伴います。今回はドクターが患者さんが多すぎて見れないから、学生が患者さんを見ているそうです。確かに学生は経験を詰めるから、良い機会かもしれません。でも、経験を積んだドクターの治療レベルには全く届いていないはずです。。
みんなはこの記録がどこかに載るとかで、誇らしげにしています。なんだかなー。
とりあえず、私は写真記録係になったので明日は4時起き(vamanaは朝に行わなくてはいけません)で病院行ってきます。
あ、古典書には痩せている人は食後にビールを飲むといいとも書かれてます。20歳の頃、ビールをよく嗜んでいたから痩せなかったのかな…?
1年生の授業。
私は現在2年生なのですが、今日は1年生の科目について書いてみようと思います。
1年生では5科目学びます。
・解剖学(現代医学とアーユルヴェーダ両方)
・生理学(現代医学とアーユルヴェーダ両方)
・サンスクリット語
・ashtanga hrdaya(アーユルヴェーダ3大古典書のひとつ)
・インド哲学
見て分かる通り現代医学から哲学までと、文系理系両方の幅広い知識が求められます。
解剖学と生理学。
アーユルヴェーダのみならず、現代医学も学ばなければならないです。そもそも、日本では文系しか頭になかった私が医学を英語とサンスクリット語の両方で学ばねばいけないというあり得ない状況に毎日泣いてました。特に現代医学書は1行読むごとに辞書を5回くらいひかねばならず地獄のようでした。
ちなみに解剖学は人体を使って解剖をします。本当に医学部です。
そしてサンスクリット語。
アーユルヴェーダはサンスクリット語で書き残されたので、この知識は必須です。現在では、英語や他言語に翻訳された古典書も出版されていますが、翻訳者の意見が入った上での翻訳になってしまうので。純粋な意味を読み取るためには、サンスクリット語から直接読むべきだと言われています。こちらの知識もゼロからのスタートだったので、「あ、あー、い、いー」と赤ちゃんのような出だしでした。泣ける。
次はashtanga hrdaya。
アーユルヴェーダは沢山の古典書に書き残されたのですが、その中でもcaraka samhita, sushruta samhita, ashtanga hrdaya は 三大古典書と呼ばれています。
(ちなみにsamhitaは古典書といったような意味です。)
■Caraka samhita:
caraka は人の名前。carakaは内科医だったため、caraka samhitaは内科的な知識に重きが置かれています。(大学のシラバス上では2.3年生で学びます)
■Sushruta samhita:
Sushrutaは外科医だったため、こちらは外科的な知識に重きが置かれています。(シラバス上では4年生で学びます)
■Ashtanga hrdaya:
直訳するとAshtanga(8つの)hrdaya(心臓)という意味。現代医学の内科、外科、精神科などと似たような感じで、アーユルヴェーダには8つの科があります。他の古典書は分厚いものばかりで、全ての知識を学ぶには一つの人生では足りないと感じた著者のvagbhataは8つの科の重要なところを他の古典書から短くまとめました。それが、Ashtanga hrdaya です。(1年生では全120章中、最も重要な30章を学びます)
最後はインド哲学。
こちらは、宇宙の成り立ち、宇宙人体物質の構成要素、魂についてなどなど、とても哲学的な内容ですがアーユルヴェーダを理解するのに欠かせない非常に重要な科目です。
授業は朝の9時から4時までお昼休み以外は休みなく60分授業の繰り返しです。
(とはいっても教授が来なかったり遅れて来たりは、よくあることなので自由な時間もある時はあります。そしてシラバスの内容が授業で終わることはないので結局みんな独学せざる終えません。)
月〜金まではこの時間割で、土曜日は13時までの半日授業です。
長期休みは夏と冬に2週間あります。
(ちなみに休みの日程が知らされるのは、だいたい休みが始まる前日なので全く予定がたてられません。。)
ある日の一日のスケジュール。
1時間目:インド哲学
2時間目:サンスクリット
3時間目:解剖学(理論)
4時間目:生物学(理論)
お昼
5.6時間目:解剖実習
といった感じです。
あ、大事なこと。英語で教えると大学側は言っていましたが、実際授業の半分以上はヒンディー語です。2年生になった今は9割はヒンディー語になりました。あはは
というわけで、インドの大学でアーユルヴェーダを学びたいという方は、英語で絶対に教えてくれるところを見つけるか、ヒンディー語を授業がわかるレベルに身につけてから来ることをおすすめします。くれば話せるようになるなんて言う人もいますが、膨大すぎる勉強量+医療英語+サンスクリット語+ヒンディー語の習得は不可能に近いと思います。(とてつもない苦労をするので私の通っている大学はおすすめしません)
写真は昨年度の時間割。インドの伝統医学部生活を少し味わってもらえれば。では!
はじめまして。
インドの大学でアーユルヴェーダという伝統医学を学んでいます。
いちよう住所はデリーなのに、なぜか周りに畑しかありません。デリーの中心部まで2時間半くらいかかります。そのおかげで空気はまあまあ綺麗です。
BAMS(Bachelor of Ayurveda Medicine and Surgery)という卒業まで5年半かかるコースで学んでいます。卒業すればインドではアーユルヴェーダ医師として活動できます。
(1年×3学年 + 1年半×1学年 + 1年病院でインターンシップ)
現在なんとかかんとか進級し、2年目です。
ちなみにインド政府の奨学生なので、進級できなかったら奨学金止められる+今までもらってたお金を返済しなくてはなりません。THE サバイバル。
あまり日本に帰れないし、日本に帰っても短時間で友人や知人に日々なにをしているのか伝えるのはなかなか難しいので。日記がてらブログ書いてみようかーーとゆるっと始めることにしました。(3日坊主体質なので続くかはわかりませんが。。)
インドの伝統医学部生の生活に興味がある人はどうぞー。では。
写真は寮の屋上から。ね、畑しかないでしょ?